季節の風 夏ー1


剣岳の断崖に
一輪のミヤマオダマキが咲いていた。

カニのヨコバイを下り切って
一息ついた岩のテラス

濃紫の花は
わずかな草丈を支えにして
思いっきり大きく咲いていた。

 

    (剣岳の山頂から八ツ峰を見る)

 

 



潮が引くと、ゴカイを掘る人の姿があったから
石積みの護岸は、大人の背丈くらいのものだったろう

入り江の海は穏やかで、満潮時には
コップの中の表面張力のように、足元で膨らんでいた

無数の糸をなびかせた花クラゲは
水底に揺らぐ波の影と、優雅なダンス

学齢期に達しない私の、最初の冒険は
この石垣の先端を、海すれすれに歩くことだった。


 

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