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                 天狗塚 「天空の池に憩う」  03.7.15. 三人会7月例会 

天狗塚 標高1812m。
徳島県随一の縦走路は 西日本第2の高峰剣山から次郎笈〜三嶺〜天狗塚と続く尾根道コース。
その縦走最後のピーク天狗塚は 秀麗な三角錐を躄峠(イザリ峠)から屹立する。
6〜7月はコメツツジの白に映え 秋はコメツツジの華麗な紅葉に彩られ 静謐な佇まいを見せる。

コースタイム

 4:00 宇和島出発→高知県檮原町経由
 5:40 高知県須崎市→高知自動車道→大豊経由
 7:50 徳島県東祖谷山村久保 西山林道登山口 
 8:20 登山口出発
 9:20 1476mピーク
10:30 躄峠 久保分岐
      綱附森分岐で撮影タイム
11:40 天狗塚 山頂
12:10 牛の背の池  (昼食)
13:50 躄峠 久保分岐
14:40 1476mピーク
15:20 西山林道登山口 帰着
    (コメツツジ咲く躄峠から天狗塚)

 8:20 西山林道登山口出発。「天狗塚登山口」「イザリ峠」と2本の指道標がある。
      天気予報は晴だったが 今にも降りそうな空だ。
      舗装道路から数段のハシゴを登って登山道に取り付く。
      少し登った地点で可愛い花を見た。ランの一種みたい。

              

     道の左は植林の伐採中で ヒノキの香が漂う。右は暗い自然林である。

 9:20 1476mのピークに到着。
      左手に大枝を広げた巨樹。右には 朽ちかけた道標が辛うじて立っている。
      巨樹の幹は太いわりに短い。 
      枯れて抜け落ちた大枝の痕が空洞を作り 底知れぬ闇を思わせ 気色悪い。
      葉を付けた枝はダケカンバ独特の色艶を誇っているが
      剥落の樹皮が襤褸(ぼろ)の如くぶら下がり 重く湿った空気のなかで 微動だにしない。
      幾星霜を経れば こんな姿になるものか〜
      これが 巨木の森との 最初の出合いであった。            

         

ピークから 周囲の雰囲気が一変した。
少々下って上り返す。 霧がうっすらと纏い付き
緩やかに上り始めた道は 次第に斜度を増し 急峻となり
ダケカンバやモミ、カエデの信じられない太い幹の古木が
泰然と場所を占め 古色蒼然ドカーンと太く 
しかも 腕を広げたように 数多くの枝を伸ばしている。
ブナは隅っこで小さくなっている感じ。
あえぎながら登っていると ホトトギスが
”テッペンカケタカ”と樹上から叫ぶので
「カケタのは お前さんだよ」と言い返してやった(^^ゞ
あとは 沈黙の世界。

ナナカマドの巨幹は 苔生して傾ぎながらも 多数の枝を広げ 勢いよく葉を茂らせ  
油断をすると 枝が伸びてきて根元に引き込まれそうな 畏怖感があった。
そう! ここは「巨木の森」。
トールキン作「ロード・オブ・ザ・リングス」指輪物語の
第一部「旅の仲間」に出てくる「オールド・フォレスト」”古森”みたいだ!
ホビットたちは 柳の老樹の根っこに取り込まれたんだよ!

登っても登っても 森は続く。空気は動かず 全身汗だく。しかし 森は森閑と暗く無関心のようで・・・
それでいて こちらの隙を狙っているような気がする。

10:00 古森を抜けた途端に 霧がはれた。ラッキー!
      アザミのピンクが目に沁みる。  コメツツジも咲いている。
    

右手は雲海だ♪ 
先ず画面左の山が頭を出し ついで続々と見え始める。石鎚山脈の縦走路の山並みかなあ〜
綺麗だよぉ 幸せ〜。

水滴を含んだコメツツジの花にハナバチがいる。丸々としているからマルハナバチってのは どう?
ここから 私の足が進まなくなる。念願のコメツツジに会えたので 撮影に忙しい。
でも どれもこれも皆 ピンボケだったのよ!

10:30 躄峠(いざりとうげ)の久保分岐に到着。右は天狗塚の山頂へ、左はオカメ岩・三嶺方向へ。
      私たちは天狗塚に背を向けて左へ 躄峠の東端に行く。
      三嶺の三角錐の右遠く 次郎笈と剣山。ズーム撮影が上手く出来た。
      梅雨の晴れ間は空気が澄んでいるから 遠望が利く。      

     

      眺望を楽しみながら 軽食を摂った。
      足元の笹原には 暗赤色のタカネシュロソウ、模様が美しいシコクフウロ

           

眼下にポツンと道標が見えるのは綱附森分岐。和美さんが地図を調べている。
分岐から 地蔵の頭を経て綱附森まで3時間の行程だという。ベテランコースだなっ!

  
         綱附森分岐と地蔵の頭           綱附森(つなつきもり) 肉眼では すぐそこに見える

綱附森分岐まで下りてみた。ここから見る縦走路は素晴らしい。
稜線上を登山道が オカメ岩〜西熊山〜三嶺へと伸びている。三嶺の右遠く 剣山が霞む。

  
     綱附森分岐から三嶺への縦走路        道標の真ん中に見える三角錐は天狗塚 

  

撮影を済ませて 天狗塚へ向かう。
コメツツジの控えめな白い花は
天狗の勇姿を引き立てる。

”天狗塚にはコメツツジがよく似合う”

谷から霧が湧き上がってきて
綱附森は見えなくなった。
山の気象は変化が激しい。

 

  
 躄峠から牛の背を見る(巻き道の分岐点で)           躄峠のコメツツジ

天狗塚への登りにかかる。
急坂だけれど 
右手の斜面がお花畑で
楽しい行程である。

シモツケの紅色が濃くて見事!

 

 

 


11:40 天狗塚1812m 山頂
      霧が流れては消えていく。眼下に祖谷の人家を見る。
      牛の背に池が出来ているのが見える♪
  

反対側の急斜面を牛の背へと下りた。ここの急角度は 大したもんだ。細心の注意を払わなければ
笹の間に見え隠れする細道が 雨後のぬかるみで とにかく滑りやすい。

12:10 牛の背の池に到着。
      窪みが2ヵ所あり 水を湛えているのは左の方だ。
      苔の小島、笹の小島、清らかな水。水底もウマスギゴケで蔽われている。
      近々とある大空に映えて”天空の池”が存在していた。

 

少し先に岩のピークがあったので そこまで行って 昼食にした。
笹原の中は まだ蕾も出てないリンドウや オトギリソウが出番を待っている!
目の前に在る筈の綱附森は 谷全体の霧で見えない。時折その霧が流れてくる。
小さな岩に寄り添ってオトギリソウが一輪だけ咲いている。牛の背から見る天狗塚も秀麗だ。
 

      昼食後 また 池に寄リ道する。池の周辺も湿地なので 笹の間に苔が混じっている。
      ひょっとしたら 湿地帯に笹が侵入してきているのかもしれない。
     
  巻き道分岐へ 詩情漂う和美さんの後姿。   池から 牛の背の稜線へ道が続く(和美さん撮影)

13:30 巻き道分岐
      帰りは天狗塚の左裾の巻き道を辿る。

13:50 躄峠 久保分岐
      ”古森”をひたすら下りる。足元に白い小花が落ちている。「何の花かしら」と見上げたら
      右肩にハラハラと落花してきた。一瞬 高枝に絡まったツタと花が確認できた。
      肩の感触ときたら 森の精にトントンと軽く叩かれたみたいで〜体がこわばる。 

登りと違って霧が無く 森の中はクリアーなのに 雰囲気が重い。
邪悪とか悪意は感じられないにしても、何かが聞き耳を立てているような〜
「好奇心」のようなものが 肌にザワザワ伝わってくるのだ。
なるべく 無頓着を装い 歩く。 物音がしない。

14:40 1476mのピークに着いた。伐採作業の人声や機械音を聞いて 今までの緊張が解けた。
      往きは気付かなかったダケカンバの若木林、樹皮が綺麗。

   

少し下りた所で オレンジ色のキノコのような物を見た。葉緑素を持たないこの植物は 何だろう?
(追記:ベニナギナタダケというそうで、食用になるらしい。茹でて食べたと或るブログに載っていた)

15:20 西山林道登山口 帰着。

      *****************************

☆ 和美さんと二人だけで行ったのですが 予想を遥かに超えた素晴らしい山行でした。
   天狗塚は 躄峠の台地と 牛の背の悠大な笹原を従えて屹立しています。
   登って散策してみなければ分からない 天狗塚の魅力です。              
            

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